ロベルト・ズッコ
 ROBERTO ZUCCO
 
Bernard-Marie KOLTES

 2002年文学座6月アトリエの会
 
文学座創立65周年記念

  

中野誠也さんのご子息・中野志朗さんが初の演出を手掛けます「ロベルト・ズッコ」が文学座アトリエで公開されます。
アトリエの会員以外の方でも一般でチケットが取れるそうですので、興味のある方は是非一度ご覧ください。


左上の画像はイメージです

「ロベルト・ズッコ」
 作:ベルナール=マリ・コルテス
 訳:石井 恵
 演出:中野志朗

父親殺しの罪で刑務所に入った青年ズッコ。ある日脱獄を謀り、逃亡の途中で理由なき殺人を繰り返してゆきます。その行為の真意とは?その結末とは?現代社会にも通じる鮮烈な作品。

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□場所:信濃町 文学座アトリエ
□日程:2002年06月28日(金)〜07月10日(水)
□前売:3500円  (全席指定・税込)
 当日:3800円  (全席指定・税込)
□予約:05月27日(月)〜
□チケット:文学座 0120-481034  (10:00〜17:30 日祝を除く) 
     :ぴあ  03-5237-9988 / 9999 
□お問合せ:文学座 03-3351-7245  (10:00〜18:00 日祝を除く)
      
文学座HP http://www.bungakuza.com/


2002年07月06日(土)14:00〜 文学座アトリエ公演「ロベルト・ズッコ」

本日、文学座アトリエ公演「ロベルト・ズッコ」というお芝居を観てきました。
このお芝居は、中野誠也さんのご子息・中野志朗さんが初めて演出を手掛けた作品で、”理由なき”殺人を繰り返す青年の内面的葛藤を焦点にした鮮烈な内容でした。

「何故そうも簡単に人を殺すのか?」これは、この作品を観た方全員が疑問に思ったことだろうと思います。
しかし、考えれば考えるほど、私達の考える”理由”というものがズッコにはなんの意味も持たないことを、痛感させらるのです。しかし、ここで完結しては感想になりませんので(笑)、私なりの考えをご紹介したいと思います。一個人の考えですので、そんな考え方もあるのか〜と笑って許して下さいませ!
この物語の中で、ズッコはいろんな人間に出逢い、殺人を重ねてゆきます。父親、母親、警官、子供…。しかし、その殺人は無差別のように見えて、そうではない?そこにズッコの選択=理由を見い出せそうにも思えます。

皆さまは、「山アラシのジレンマ」というのをご存じでしょうか?これは、哲学者ショーペンハウエルの寓話で、”2匹の山アラシが互いに身を寄せあい寒さを防ごうとするが、身を寄せあうとトゲでお互いを刺してしまい、かといって離れると身体を暖めることができない。ジレンマに苦しみながらも山アラシはやっとお互いを傷付け合わず暖めあえる距離を見つけるのでした…”つまり「適度な心理的距離をどう取るか?」という話です。

人はお互いにある距離をとって接しています。近過ぎれば傷付き、離れればお互いの身体を暖める=理解することはできません。たいていの人間は無意識のうちにその術を身に付けます。
しかし、青年ズッコは敢えて傷つけながら人間とぶつかってゆきます。(傷つけられながらも)それを受け止めてくれる人間(少女、喧嘩相手の男、婦人)には”生”を、受け入れてもらえない人間(父親、母親、警官)には、究極の選択である”死=殺人”が待っているのです。
”自分は透明でありたい”と呟きながら、殺人という行為に及ぶのは、「適度な心理的距離を保つ」ことのできない葛藤の現れなのかもしれません。
しかし、最後に出逢った子供。これは、少し特別な位置にあるような気がしてなりません。
自分の核心に近寄り過ぎた存在、触れられた瞬間拒絶してしまいます=殺めてしまいます。
(この展開にはちょっと衝撃を受けました)

最期、屋根に登り太陽に手を延ばすズッコ。もう傷つけあうもの(理解する者?)が存在しないからなのか、まるで世間を見捨てるかのごとく、まだ観ぬ世界を目指します。
そこには、何があるのか?ズッコの焦がれる「雪の降るアフリカ」なのか?
果たして、そんな”楽園?”は存在するのか?

私達は、ただ呆然とズッコを見上げることしかできないのでした…。

以上です〜(汗)。よく分からないという方、すみません。
何がなんでも理由付けしようとする考えが、ある意味妨げになっているのかもしれません(笑)。
(これではズッコの考え方など理解できないのかもしれません)
が、やっぱり考えずにはおれない!人間とは、そういう生き物なのです。
どうか、お許し下さい。

今回の作品は、演じていらっしゃる俳優さんの後ろで戦う、中野志朗さんのお姿を垣間見たような気がします。
作品のエネルギーに押しつぶされまいと、手綱を握る!
これから、どんな作品を手掛けるのでしょう。次回の演出作品が楽しみです!

2002/07/06 SNOW



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