長野県伊那谷伊那路村。木地師の息子である少年・小椋半次(片岡孝太郎さん)は、奉納行事として継承されている農村村歌舞伎の舞台で「天竜恋飛沫」を踊る桂木雪夫(片岡愛之助さん)の舞を観て心を奪われます。その後、雪夫に誘われ少女・歌子(麻生久美子さん)と共に歌舞伎を始めた半次は次第に芝居の世界に魅せられてゆくのでした。
雪夫に誘われ歌舞伎を始めた半次は、初舞台の「新口村」で大成功を収め、半次と雪夫は村の看板役者となっていきます。
時は過ぎ、昭和19年。半次と雪夫はそれぞれ女形と立役となって歌子とともに村歌舞伎の舞台を踏むようになりますが、世の中は第二次世界大戦真っ只中。ついに、半次と雪夫のもとにも召集令状が届きます。
出征前夜、雪夫と歌子は仮祝言をあげ、半次らは村の若者達とともに「お名残狂言」を最後に出征するのでした。
終戦を迎え、半次らはシベリアのラーゲリに収容されます。飢えと過酷な労働で病に倒れた同郷の政男は、故郷を夢見ながらも極寒の地で果ててしまいます。一縷の望みに懸けた半次と雪夫は、果てしない凍土へと脱走しますが生還したのは半次ただ一人でした。
一人帰国した半次は、いなくなってしまった雪夫との空白を埋めるかのように、かつての雪夫の役を演じ続け、戦後衰退した農村歌舞伎を守っていきます。
ある日、遠く離れた村で、伊那谷だけに伝わる芝居「六千両」を演じる役者がいることを知った半次は……。
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